マスク研究14 【仮面ライダーサガ】 [マスク研究レポート]
仮面ライダーキバに登場した「サガ」。
キバに登場する怪人群のうち、チェスの駒になぞらえた4人の実力者たちの頂点、
「王」(キング)と称される人物が変身した姿で、
キバ怪人デザインの特徴であるステンドグラスのような色鮮やかな装飾を施したスーツが印象的でした。
テレビシリーズ中盤より活躍したサガは、キバのエンペラーフォームと対峙する場面が目立ちました。
エンペラーフォームのメインカラーである金・赤に対して、
サガのモノトーンのスーツに映える鮮やかな青や、
ピンポイントでカラフルな装飾を持つ独特なカラーリングが画面に映る両者を惹き立てあっていました。
大きな青い複眼に覆われたサガのマスク。
設定上、「仮面ライダーキバ」と同じルーツを持つライダーということもあり、
複眼やアゴの形状・全体のシルエットなど、キバのマスクの特徴を残しつつアレンジされたデザインです。
キバとは異なる頭部の白い帯状の造形はまるで王冠をかぶっているかのようであり、
王を名乗る存在としての設定を踏まえた迫力を演出しています。
また、この王冠の形状は西洋のゴシック建築に見られる構造様式「尖頭アーチ」を模した山型に仕上げられており、
作品世界のイメージを反映したテイストで統一されています。
王冠の輪郭は黒いラインでなぞられていますが、
画面背景のハイライトによる白飛びを防ぎ、
マスクの輪郭をぼかさない視覚効果が得られていたのではないでしょうか。
額を中心に独特のディテールが集中するサガのマスク。
まず中央の赤いOシグナルを円状に囲む装飾は、
「バラ窓」と呼ばれるゴシック建築の教会などに見られる放射状に広がる窓を模したものになっており、
サガの額は建築の様式美を取り入れた意匠でまとめられています。
バラ窓は外の光を透過して室内にステンドグラスを映すためのものであり、
ステンドグラスを模した色彩設計で統一されたキバの怪人イメージを共有する記号として、
サガの持つバックグラウンドを象徴するアイコンとして額を飾っています。
撮影用マスクのステンドグラスの最下段は黄色~オレンジのグラデーションになっていますが、
キバ特写写真集などに掲載されたデザイン画では特定の色を配するというより、
ホログラム状に色が変わることを想定していたことを思わせる配色でした。
おそらく立体化の際、青い複眼の補色として機能させるために目の近くの部分は黄色系にされたのだと思います。
サガはキバのイメージモチーフであるコウモリに対し、牙を持つ動物、
そして回転する変身ベルトから着想された「ヘビ」のデザインが取り入れられています。
眉間から複眼の輪郭をなぞるようにヘビの身体が伸びてゆき、
それが首元を周ってふたたび眉間で2匹のヘビが向かい合う構図を作ります。
このアングルから見るとヘビの身体のラインそのものがS字を描いており、
サガのイニシャルのS・あるいはSnake(ヘビの意)を表わしているように映ります。
またこのヘビの顔は正面から見ると、2匹併せて1匹のヘビが口を開けているようにも見ます。
これは2匹のヘビを象った意匠として知られている「ヘルメスの杖」を想起させますが、
この図が「二元性の統合」を意味していることをふまえると、図らずも変身者である登 太牙が、
最終話で人間と怪人との共存への道を歩みだそうと決意したことの暗喩的な造形であるとも捉えられます。
マスクの耳にあたる部分には前述の意味合いを持つであろうS字の彫刻があります。
これは1号などの耳部分にある矢尻状の彫刻のアレンジなのでしょう、
同様の造形がクウガやブレイドにも見られます。
ちょうどこのS字彫刻の傾きは、複眼の下部分の輪郭の延長線上につながる位置にあり、
ディテールの多いデザインを煩雑な印象にせずにラインが整えられています。
サガのマスクの造形バランスは仮面ライダーカブトに登場したサソードとよく似ており、
Oシグナル周辺がダイヤ型である・下に尖った複眼・複眼の左右にとがった造形があるなど、
かなり近いバランスを元に仕上げられています。
同じデザインラインをなぞりながらも異なる印象のヒーローを生み出していくのは仮面ライダーのお家芸、
初代から続く手法でもあります。
また、どちらも怪人の力の資質によって変身したライダーであり、
ある種、伝統的な仮面ライダーの変身ルーツを踏襲した王道を行く仮面ライダーなのかも知れません。
おめもじでした。
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