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マスク研究21 「仮面ライダーバロン バナナアームズ」 [マスク研究レポート]

マスク研究バロンtop.jpg


フルーツと鎧をモチーフとした異色のライダーデザインが話題となった仮面ライダー鎧武。

主人公のライバルとなる劇中で登場するストリートダンスグループの一大勢力であるチームバロン。
そのリーダー、駆紋戒斗が変身するバロンは「バナナ」をあしらったデザインで登場しました。

剥いたバナナ型のロングスピアーを携え、謎の異世界の森とそれを秘密裏に調査する巨大企業、
それらを相手に飽くなき強さを求め克己するキャラクターでした。

最終的には己の身を顧みず、信念に殉ずる覚悟で主人公に挑むライバルとして、
鎧武のクライマックスを盛り上げました。



バロン正面.jpg

西洋の鎧兜にバナナのトッピングという非凡なアイデアのバロン。

マスク側面から「バナナの角」が伸び、
龍騎を思わせる格子状の鉄仮面が物々しくも精悍かつクールな表情を作っており、
一見ふざけているようなバナナの角がマスクの造形バランス上、
極めて重要な要素になっています。

まずバナナの先端がナナメにカットされているところに注目です。
この角度が額の青いOシグナルのダイヤカットの下辺の角度と平行に揃い、
さらに口元の赤い部分のナナメの辺の傾きとも平行に調和した角度になっているため、
マスク全体がバナナによってX字型に整えられた造形です。

また、左右のバナナによって横に広がる視覚上の重心が、
マスク中央の縦のつながり(赤い頭部突起・縦長のOシグナル・複眼の中央分割)によって
強く引き締められており、バナナの造形が鉄仮面デザインに不思議なほど調和しています。


バロン側面2.0.jpg

横から見たバロンのマスクは特に西洋兜の印象が強いものとなっています。

まず、こめかみのあたりにはバイザーを開閉するヒンジのような形状あり、
アゴの先が前方に向かってとがっているのも西洋兜の特徴を拾ったものに見えます。

また、バナナの角の面取りのラインと複眼のラインがそろっており、
ここでもバナナの造形と鉄仮面のバランの調和が見てとれます。

他のアーマードライダーと違い、ツノ以外は金属製の兜のイメージを強く反映したデザインです。

バロン仰角.jpg

仮面ライダー鎧武に登場するライダーマスクの特徴といえば複眼も見過ごせません。

鎧武の複眼がオレンジの輪切りをイメージしたものであったように、
モチーフとなった果物のイメージを取り入れている点はバロンも同様です。

バロンの場合は剥いたバナナが無数に並んでいるかのような複眼パターンが見られ、
色もバナナの果肉をイメージしたであろう、淡いイエローのカラーリングが施されています。

また複眼の輪郭もやや独特で、口元のラインに沿って下へ少し伸びています。
これはおそらく石ノ森ヒーロー特有の泣いているように見える造形、
通称「涙ライン」と呼ばれる悲しみを背負うものの表現ではないでしょうか。

戒斗は過去に父親が営む工場を巨大企業につぶされたという辛い経験が
人格形成に大きく影響したという描写があるため、
結果的に悲しみを背負ったヒーローとしてのニュアンスが感じられます。

バロン頭頂俯瞰.jpg

バロンのマスク造形では、バナナ形状に鉄仮面の造形バランスを合わせたのか、
鉄仮面にバナナの造形バランスを合わせたのかの前後がわからないほど、
デザイン上の共鳴が強く感じられます。

このナナメから見た場合でも、バナナの面取りのラインが、
複眼のラインへスムーズにつながる位置に調整されており、
バナナデザインを「整ったカッコよさ」へと昇華している一端が見られます。

この一見突飛な組み合わせも、初代仮面ライダー企画時に、
「踏めば潰れるバッタがヒーローのモチーフなのか?」と疑問を呈された経緯を感じさせますが、
仮面ライダーのアイデア自体が王道的なものからは外れた異形を以て人気を博した、
という点から見れば、バナナと西洋鎧兜の組み合わせも納得がいきます。

むしろアイデアの着眼点としては非常に仮面ライダーらしいとも言えます。

バロンが最終的に禁断の果実を飲み込み、さらなる力を得て変身したように、
仮面ライダーもまた、「新しい何か」を取り込むことで、
生き残りを駆けてまだ見ぬ新しい変身の姿を勝ち取っているコンテンツなのでしょう。

長く続くコンテンツになればなるほど、
食べごろの果実のような新鮮さを失わないアイデアの出し方の工夫が求められ、
デザインの上で壊す部分と、守る部分が常にせめぎあうはずです。

番組として勝たなきゃすぐに崖っぷち。
まだまだ仮面ライダーからは目が離せません。

おめもじでした。

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S.H.フィギュアーツ仮面ライダーバロン バナナアームズ




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マスク研究20 「仮面ライダー弾鬼&鋭鬼&裁鬼」 [マスク研究レポート]

ライダーダンキエイキサバキ1.1.jpg


「仮面ライダー響鬼」に登場した弾鬼(ダンキ)・裁鬼(サバキ)・鋭鬼(エイキ)。

彼らは響鬼たちが所属する猛士・関東支部の正式な音撃戦士であり、
複数名の戦士が関東圏を持ち回りでパトロールしているという世界観を表現していました。

威吹鬼などのレギュラーキャラクターとは違い、登場回数こそ少ないものの、
戦闘スタイルやキャラクターに個性があり印象に残る存在でした。


三鬼正面.jpg
響鬼特有の隈取りラインと額の鬼面で飾られたマスク。

デザインの構成要素はシンプルながら、それぞれシルエットと顔つきに特徴があり、
響鬼・威吹鬼・轟鬼とは一味違う表情を見せています。

隈取りのカラーリングはという、
響鬼・威吹鬼・轟鬼それぞれのキーカラーに近い色分けがなされ、
キャラクターの統一感を持たせながらも、
アレンジの利いた隈取りによってバリエーションに富んだマスクに仕上がっています。

これらの鬼戦士は響鬼などのレギュラー鬼戦士のスーツの改造によって製作されたことが
響鬼の特写写真集「魂」で紹介されていますが、
主役の「響鬼」のスーツは完成までに試行錯誤を経てかなりの数の試作が作られた事は、
結果としてサブキャラクターを充実させたことにつながったのではと思います。

ダンキ1.jpg
TVシリーズ十三乃巻でゲスト鬼戦士の1号となった弾鬼。
変身前のダンキ役を響鬼のスーツアクターを務めた伊藤慎さんが演じていたことが知られています。

顔の中心でX字に交差する隈取りが特徴のシンプルな印象のマスクですが、
これは響鬼の検討段階のデザイン画に似ているものが存在しており、
隈取りがX字に近いバランスで描かれたスケッチがあります。

実際に初期響鬼としてマスク造形まで完成したものを弾鬼として登場させたか、
改造されたものか、ボツ案をブラッシュアップさせたものか、製作の経緯は不明ですが、
音撃戦士の顔付きのベースとなったであろうシンプルさが魅力でもあります。

実際にこのマスクからはレギュラー鬼戦士の特徴を少しずつ感じさせるデザインが見られます。

額の鬼面など造形ベースは響鬼、
カラーリングは威吹鬼、一本ヅノでキバ形状の無いアゴは轟鬼を思わせる特徴があり、
このマスクから派生しそれぞれの完成に至ったと考えてもあまり違和感のないデザインです。


サバキ.jpg
TVシリーズ十五乃巻より登場したゲスト鬼戦士の中では最も登場回数が多いベテランの裁鬼ですが、
その活躍の多くは魔化魍との苦戦であり、
劣勢や窮地、鬼の世代交代がある様子などが裁鬼を通して表現されていたように思います。


黒い仮面に赤い隈取りラインが映える裁鬼のマスク。
赤という色は黒を背景にするとより鮮やかに見える性質があります。

他の鬼に比べ、鋭く直線的にアレンジされた隈取りラインは、
顔の中心からマスク全体へ放射状に広がるように配置され、額の鬼面も響鬼と同デザインながら、
他の鬼とは似て非なる独特な迫力があるマスクになっています。

特に頭部側面で大きくせり出す隈取りラインは、鋭いエッジ形状に仕上げられ、
裁鬼マスクの顔だちを引き締めています。

マジョーラカラーという発色にゆらぎがある特殊な塗料を用いたスーツが話題となった響鬼ですが、
所々に「グラデーション表現」が見られるのも響鬼系スーツの特徴です。

裁鬼の場合、額の鬼面から伸びるツノが金色赤色のグラデーションとなっており、
メリハリの強いマスクデザインの中で、目を引く印象的な塗装表現です。


エイキ1.jpg
TVシリーズ二十八乃巻に登場したダジャレ好きで小柄な鬼戦士の鋭鬼は、
ゲストながら威吹鬼・轟鬼と共闘し必殺技を披露するなど、見せ場に恵まれた存在でした。

弾鬼らとは違い明らかに威吹鬼の造形と似ている点が多く、
登場時期も中盤に差し掛かっていることから、威吹鬼のアトラクション用マスクなどを改造して製作されたものではないかと考えられます。

眉間から続く隈取りラインが左右で大きくなり、真上に伸びているのが鋭鬼の特徴です。
威吹鬼よりも左右の角を大きく目立たせた分、頬にあたる部分はシンプルになっています。

また、カラーリングは他の鬼でも当時の仮面ライダーでも見られなかった
鮮やかな緑青色(エメラルドグリーン)が使われている点も特徴で、
ベースカラーの暗めの赤銅色に映える個性的な配色が魅力です。

三鬼1.jpg
登場シーンが本当に少なく、物語において重要な役どころでもなかったこれらのゲスト鬼戦士ですが、
結果的にマスコレや可動フィギュアなど商品化にも恵まれ、一定の人気を持っている理由のひとつに、
響鬼の世界観がゲストキャラクターに確かな存在感を与えていたことが挙げられると思います。

近年の新ライダーや新フォームの登場と言えば、
物語のターニングポイントであったり、華々しく活躍するクライマックスシーンが用意されていますが、
弾鬼などは変身シーンも無かったり、怪人にとどめを刺すこともなく登場しています。

はっきり言えば扱いがとにかく地味、であるにも関わらずです。

「響鬼」と言えば平成ライダーの中でも独特な世界観を持つ異色作として知られていますが、
劇中では主役の響鬼/ヒビキだけがヒーローとして特別な存在ではない、という設定が特徴です。

響鬼は日本各地を守っている組織の精鋭の中のひとり、という位置付けであり、
そういう意味で弾鬼などのゲスト鬼戦士も響鬼と同格の存在であると言える設定も、
弾鬼・裁鬼・鋭鬼たちのキャラクターを支える確かなバックグラウンドとなっているのでしょう。

おめもじでした。

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S.I.C. LIMITED 仮面ライダーサバキ&エイキ&ダンキ



マスク研究19 「仮面ライダーアクセル」 [マスク研究レポート]

ライダーアクセル.jpg


仮面ライダーダブルに登場した、2人目のライダー「アクセル」。

主人公らが暮らす街の警察署に所属する刑事 「照井 竜」が変身、
超重量の剣を振るいながらも、スピード感あふれるアクションで活躍しました。

そしてアクセル最大の特徴である「バイク」への変身や、
マシンユニットとの連結による多彩な戦闘シーンも印象的でした。

登場当初、照井刑事は家族を怪人の手にかかり亡くしたことが語られ、
その犯人への復讐に燃えに燃えていましたが、
最終的に己の復讐心を克己しパワーアップを果たすことで、ダブルと共に戦い抜きました。

アクセル正面.jpg
メタリックレッドのカラーリングが目を引くアクセルのマスク。

アクセルは「バイクのヒーロー」というデザインコンセプトでまとめられており、
フルフェイスタイプのヘルメットを模した形状をベースに仕上げられています。

仮面ライダーWに登場するライダーの頭部のツノ飾りは、ライダーごとにシルエットが異なり、
ダブルの左右2本ヅノに対して、アクセルは中央にまっすぐ1本のツノが伸びています。

赤いマスクに鋭い1本のツノ、これは直情的で熱い剣使いのキャラクターを表現するかのように、
劇中でのパワフルな存在感を強調していました。

アクセルスラント.jpg
前述のようにヘルメットをイメージした造形のアクセルマスク。

さらに半透明の青いバイザーを中央のシルバーのラインによって分割し、
内部ディテールを透かすことでライダーの複眼のような仕上りを見せているのも特徴です。

バイザー中央のシルバーラインはAccel(アクセル)のイニシャルAの文字型に処理され、
ダブルのW字アンテナと同じ手法がアクセルにも取り入れられています。

アゴの近くのシルバーラインは下にとがった形状をしていますが、
これはクラッシャーのようなキバをイメージさせるライダーらしい意匠として、
同時にバイザー下端の水平ラインに対するアクセントとして輪郭にメリハリを与えています。

アクセルアンテナ.jpg
アクセルのツノの先端にもエンブレム状に再現されたAの文字があり、
かなり広い角度でAの文字を捉えることのできる配置になっています。

この縦に長く伸びるツノは、横に広がる青いバイザー部分と形状のバランスを取り合い、
それぞれの造形特徴を強調し、マスクの造形をいっそう引き締めています。

ヘルメットの赤い部分は凹凸のないシンプルな形状をしていますが、
全体にわたりダブルの頭部に刻まれたラインをイメージさせる線が、
一定間隔でアクセルにも刻まれており、ダブルと同じデザインラインを踏襲したスタイルが見られます。

アクセル発光.jpg
マスクのバイザー内面には同心円状に小円のパターンが透けており、
劇中ではこの部分をLEDにより発光させる電飾面が使用されていました。

また、アクセルがバイク形態へ変身した際は、このバイザー内の発光が「ヘッドライト」をイメージさせ、
マシンテクノロジーを演出しました。

実際の撮影用の電飾マスクには、50個の高輝度LEDが穴の一つ一つに仕込まれていたことが、
「仮面ライダーW 特写写真集」で紹介されています。

この円形パターンは、バイクの部品「ディスクブレーキ」を連想させる、
一定間隔で穴の開いた円状のパーツに近い造形になっており、
バイクのイメージを追求しつつ、
それまでにないライダーの新たな複眼イメージを同時に成立させるものとなっています。


アクセルは番組中の2号ライダーという立場を振り切り、主役として活躍するまでに加速。
子供向け特撮番組という枠を振り切る魅力的なヒーローの活躍が期待されます。

おめもじでした。

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タグ:w マスコレ

マスク研究18 「仮面ライダーメテオ」 [マスク研究レポート]

ライダーメテオ1.1.jpg


仮面ライダーフォーゼに登場する二人目のライダー、メテオ。

変身時には青い光に包まれ、さながら隕石のごとく怪人の前に着陸、
ジークンドーのような拳法を用いたアクションスタイルで、怪鳥音を叫びながら闘う姿で注目を集めました。

当初、メテオに変身する朔田流星はその素性を隠しながら主人公らと関わり、
親友を救うために手段を選ばず怪人の力を利用しようと画策するなど、
一筋縄ではいかないヒーローとして独特な立ち回りを展開するキャラクターでした。

ライダーメテオ正面.jpg
一目で流れ星を連想させるひときわ個性的なメテオのマスク。

向かって右側が流れ星の軌跡をイメージしたであろう形状になっており、
左右非対称のシルエットとあいまって抜群のインパクトを持っています。

しかしながらベーシックな複眼の形状や、
目元を境に横分割されたマスクは1号を髣髴とさせる造形バランスであり、
メテオもまた仮面ライダーの伝統的な部分を取り入れつつ斬新なイメージを与えられた素晴らしいマスクです。

このアシンメトリのマスクは、主役であるフォーゼの中央がとがったロケットマスク、
つまり♢(ダイヤ)型という中心に意識が集まるシルエットとは正反対の造形アプローチであり、
後発登場のライダーとしてフォーゼとはまったく別の立場の存在であることを表現しつつ、
お互いのキャラクターを際立たせることを意図したものだと考えられます。

またマスクの透明な青いパーツが顔を広く覆うことで独特の奥行きが生まれ、
正体を隠すミステリアスなキャラクター性が強調されるデザインとなっていました。

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マスク最大の特徴である流れ星の軌跡の部分には、細長いアンテナのようなディテールがあります。

頭部にアンテナのような意匠、と言えば昭和ライダーに見られる触角、
つまりメテオもフォーゼ同様にライダーの【触角】を取り入れたデザインで共通していると言えそうです。

またアンテナが配置された部分は、ミゾが彫られたように段落ち形状となっており、
とがった軌跡部分のシャープなイメージを損ねないように丁寧に造形されています。

さらに4つの突起をもつこの軌跡部分のシルエットは、下3つの突起の先端がきれいに切り揃えたように並び、
また、上下両端の突起の角度が一番長い突起の輪郭と並行するように造形され、
実物は見かけ以上に大きなシルエットがあるように感じさせる迫力があることを想像させます。

ライダーメテオスラント.jpg
マスクのあちこちにお皿をひっくり返したような複数の円状の意匠が見られますが、
これはおそらく月などのクレーター(衝突痕)のイメージを取り入れたものではないでしょうか。

マスクを正面から見たとき、このクレーターは複眼の上下に4つ配置されていますが、
これにより顔の中心に□四角形のバランスが生まれ、
フォーゼのダイヤ型マスクとの造形バランスの対比がそれぞれの表情を際立たせます。

ディテールを作らないシンプルな口元の仕上がりは頭の上半分の青いシールド部分を目立たせると同時に、
自ら多くを語らず、モノローグでの芝居が目立った流星の特徴とマッチしていました。

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メテオには流れ星を図形化したシンボルマークがあり、
主にメテオスイッチなどに描かれるこのマークはスーツデザインにも取り入れられています。

これはマスクのディテールとしても再現されており、
複眼上部の円形パーツから3本線のラインが伸びることで流れ星マークに見えるように処理されています。

流れ星の尾にあたる3本ラインは仮面ライダーBLACKや電王のマスクに見られるラインと共通するものがあり、
メテオのイメージを汲んだ巧みなアレンジが見どころです。

メテオのようにマスク全体が複眼のような造形になっているデザインは、
フォーゼを継ぐ仮面ライダーウィザードの造形とも共通するものがあり、
今もなお現在進行形で独自の進化を続ける仮面ライダー、
まだまだ着陸地点を見据えずにどんどん突き抜けていって欲しいと願うばかりです。


おめもじでした。

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マスク研究17 「仮面ライダー幽汽 ハイジャックフォーム」 [マスク研究レポート]

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劇場版 仮面ライダー電王第3作目に登場した悪役、仮面ライダー幽汽。

死者の時間をさまよう幽霊列車に乗った死郎という男が変身する幽汽のハイジャックフォーム。

複数の独楽(コマ)を操る独特な戦法をとったり、騎馬戦を仕掛けて電王らを圧倒するなど、
多芸な一面を持つトリッキーなアクションが印象的だったライダーでした。

ユウキ正面.jpg

大きな黒いゴーグルが特徴の幽汽のマスク。

そのキャラクターの性質から、海賊のイメージと結び付けられたことで、
海賊帽やキャプテンハットなどのつば付き帽子をモチーフに、黒地金色の縁取りの意匠がアレンジされ、
仮面ライダーの複眼に相当する「目」を成立させています。

幽汽のスーツは劇場版電王1作目に登場した「仮面ライダーガオウ」のものを改造して製作されたようです。

その名残としてガオウのマスクにある頬の尖った形状が残されていますが、
ガオウも幽汽も目に相当する部分がマスクの輪郭をはみ出す大きさであり、
この部分が正面から見て左右に尖ったゴーグルの形状に対してバランスを取る役割を持っているため、
ガオウの元デザインがそのまま有効利用された形になっています。

ユウキバイザー.jpg
おそらく現時点で仮面ライダー史上もっとも大きな面積であろう「目」を持つこのマスク。

オーバーサイズともとれる、この造形には主に3つの理由が考えられます。

① ガオウのイメージから離れる

まず、改造元であるガオウのマスクは、獣の歯並びのような細かいパターンが集中する複雑なものでした。

それゆえに複眼のようなディテールのない、極めてシンプルなゴーグルに仕立てることで、
ガオウに代わる新たな幽汽という敵キャラクターを忙しいスケジュールの中で産み出すことができたのでしょう。

② ダメージ処理を目立たせる

次に幽汽は、過去の時間をさまよう死者が変身するキャラクター表現として、
永く存在してきた時間とその戦いの痕跡を、全身にダメージ処理を施すことで表現しています。

意図的にこういった処理をする際、キズが目立つ大きくシンプルなゴーグルはうってつけです。

また、同映画には未来からやってきた設定で登場する「仮面ライダーNEW電王」がいることから、
ビジュアル上、過去と未来のライダーという相対するキャラクター性が明確でした。

③ 悪役としての雰囲気づくり

そしてこのゴーグルは巨大な黒い「サングラス」を着けているかのような雰囲気を持っています。

とがった黒いサングラスと言えば、普通の人が付けていても一種の威圧感を感じさせることすらあり、
視線や表情が読み取りにくくなり、近寄りがたく怖い雰囲気を生み出す効果があります。

劇中最大の悪役として立ち回る幽汽に必要な存在感を与えていると考えられます。

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幽汽もまた、電王と同じデザインの素面マスクをベースにしたもので、
頭部を走る線路、即頭部のライン取りや口元などに共通部分が見られます。

ハイジャックフォームは頭部の【線路】が赤くなっているのですが、
これは死郎が愛する亡きソラの復活のために江戸の町の人間を皆殺しにする計画を企てたことから、
幽汽/死郎が血塗られた道を行く者、ということを暗に表現した色ではないでしょうか。

また、この線路は首元から延長され、途中から別の線路が合流した形状になっていますが、
これはまさしく線路の乗っ取り、「ハイジャック」の名前にふさわしい造形です。

さらに長い後ろ髪にも見えるこの伸びた線路は、変身者である死郎の長髪のイメージと重なります。

ユウキOシグナル.jpg
幽汽の額を飾るOシグナルは、頭部の線路のレールが伸びたラインで縁取られていますが、
電王特写写真集 第2集に掲載されたデザイナーの阿部さんのコメントによると、
レールを交差させて捻った形状には”時を捻って止めちゃうよ”という意図が込められているそうです。

止めちゃうよ、という部分はOシグナルの下で2本のラインが隣に並びあい、
結ぶように閉じた形になっていることから読み取れます。

交差したレールは、死郎が死者と生者の時間を逆転させようと企んだことまでも、
象徴しているかのようなデザインです。


自らを別のものに乗っ取らせながらも、新しい線路を進み続ける仮面ライダー。
2007年に仮面ライダーがバイクから電車に乗り換えたように、こうしたセルフハイジャックによって、
誰も見たことのないスタイルで活躍するライダーがまだまだ出番を待っているのでしょう。

おめもじでした。


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マスク研究16 「仮面ライダー旧1号」 [マスク研究レポート]

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1971年4月3日、1人のヒーローがブラウン管に登場、のちに最高視聴率30%超を記録し、
社会現象となった伝説の特撮番組の主役が、藤岡弘さん扮する「仮面ライダー」でした。

現在までに様々な仮面ライダーが登場してきた歴史の中、
仮面ライダー最初のマスクは、役者とスーツアクターを兼任した藤岡弘さんの頭に合わせて製作されました。

1号のマスクおよびスーツは放送期間中の改修・リニューアルによって外見上の違いがいくつかあり、
1~13話の最初期に撮影されたものが「旧1号」と呼ばれています。

1号正面.jpg
バッタの顔をモデルにしたことで知られる仮面ライダーのマスク。

大きな丸い目、2本の触覚、触覚のあいだの単眼、目元をなぞる黒い線、顔を横切る線。
いずれもバッタの頭部に見られる特徴をヒーローの顔へ仕立て上げた奔放かつ大胆なデザインです。

目の下の黒い部分は演者の視界を確保するのぞき穴として機能すると同時に、
悪の組織ショッカーの改造人間となってしまったことからくる悲しみを表現した
泣いているように見えるこの意匠は通称「涙ライン」と呼ばれています。

原作者である石ノ森章太郎先生の独自の着想を出発点にして、
今もなおバラエティ豊かなデザインの仮面ライダーが生み出され続けています。

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仮面ライダーを強く特徴付ける大きな丸い2つの目。

小さな昆虫の目、いわゆる【複眼】の質感を再現したこの独特な目は、
素材である透明樹脂が固まりきらないうちに、角材を当てて凹凸パターンが作られたという手仕事の結晶です。

こうして再現された複眼は、バッタ本来の生物的な印象を持ちながらも、
同時に凹凸が規則的に刻まれる造形によって人工的なイメージをかもし出し、
仮面ライダー本郷猛が改造手術を受けてしまったことによる、自然と技術の融合を象徴するかのような造形です。

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マスクの後頭部にはやや色味の異なる三角形の塗りわけがあります。

おそらくこの三角マークは背面や振り向くアクションなどの際に目印として機能し、
より画面上での動きにスピード感が生まれたのではないでしょうか。

例えば、ただの黒一色の球体が回っていたとして、それを一瞬で回っているとは判断しにくいですが、
その球体に一点でも色の違う部分があれば、どんな動きをしているかは一目瞭然です。

やはりアクションあっての仮面ライダー、動いたとき画面にどう映るか、という視点で見れば、
こういった意匠がアクションの見栄えを底上げしていたと考えられます。

1号後頭部a2.0.jpg
さきほどの三角マークは、ナナメから見たとき、頭のシルエットを絞るような見え方をし、
より人間の身体の頭から首へのラインに近くする視覚効果があります。

仮面ライダーが首に巻いていた赤いマフラーも、
スーツとマスクの不自然な境界を隠す目的で巻かれていたようです。

やはり生身の人間がマスクという”かぶりもの”をする以上、どこかに不自然さが出てしまうものですが、
それをいかに自然に見せるか、という工夫が「変身」をより格好良く見せているのでしょう。

また、耳にあたる部分には矢尻状の彫刻があり、線の谷部分には孔が空けられています。
マスクをかぶっていてもある程度は外の音声が聞こえやすいように配慮されています。

このマスク側面の彫刻は平成ライダーのマスクにも受け継がれており、
クウガやブレイド、キバなどにも見られる特徴となっています。

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するどい歯のようなマスクの口元。(クラッシャー)

マスク・仮面といえば、口元を隠す意味も含まれていそうなものですが、
仮面ライダーの場合はむしろ”口”があることを強調するようなデザインになっています。

設定上、あらゆるものを噛み砕くことができる、と言われていますが、
番組で実際に噛み付いたことはなく、のちの仮面ライダーアマゾンで噛み付き攻撃が見られました。

撮影に使われたマスクはこのアゴ部分とマスク上部で上下分割されており、
ある程度誰でもマスクを着けることができる構造になっていたようです。

(実際に1号のアクションを務めた方は複数名おり、往年のファンはアゴの位置である程度、
誰が演じているのかを見分ける方もいるようです。)

造形的には頭や目など丸い造形が目立つ中、このクラッシャーや細い触角など、
鋭い造形がアクセントとなり、ただ個性的なだけではない奇跡のようなバランスが魅力です。

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当初、主題歌のように緑色のペイントを施される予定だったマスクは、
当時主役ヒーローとして前例のない緑色がふさわしいか否かを問う意見を受けて、
より黒味を帯びた彩色とされたそうです。

また初回放送のロケが曇天だったために暗い色のマスクが画面栄えしないことを受け、
黒味に加えてパール入りの塗料で光沢を出したそうです。

スーパーマンやゴレンジャーなどのカラフルなヒーローとは異なるこのダークな色合いは、
結果的に悪の組織に生み出された陰のあるヒーローという独自のキャラクター表現に寄与していたと言えます。

いまでこそ仮面ライダーらしい顔と言えば、このバッタ顔ですが、
踏めばつぶれる小さなバッタをイメージしたヒーローなど受け入れられるのか?
という、ヒーローとしてふさわしいのかを疑問視する意見が企画時からあったようです。

しかしこの大人の常識では測りきれない個性こそが子供たちの心を捉えていたことは疑いようがありません。
むろん、着ぐるみのデザインだけで仮面ライダーの魅力のすべてを語れるはずもなく、
変身によってめくるめく変貌を遂げた仮面ライダーは、
今もその変貌の真っ最中にある、ということが現在も続く仮面ライダーの魅力の一端なのではないでしょうか。

おめもじでした。


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タグ:マスコレ 1号

マスク研究15 「仮面ライダーガタック」 [マスク研究レポート]

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仮面ライダーカブトの中盤より登場した「仮面ライダーガタック」。

カブトは斬新な新しいヒーローが生み出されてきた平成ライダー作品の中で、
原点回帰となるカブトムシをはじめとする「昆虫」をイメージしたライダー達が活躍しました。

その中でカブトムシと並ぶ人気を誇る「クワガタムシ」を模ったライダーがガタックでした。

クワガタの大アゴを模した2本の曲刀を使った剣戟、
ダイナミックな回し蹴りなど、キレのあるパワフルなアクションが魅力のライダーです。

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頭部左右からそびえ立つ2対のツノが印象的なライダーフォームマスク。

ガタックは「仮面ライダーカブト」において準主役級の存在でしたが、
主役のカブトとは正反対の性質のキャラクターを強調するかのような、
鮮やかなデザイン上の対比をマスクに見ることができます。

赤いマスクの中央からそびえる大きなツノを持ち、青い複眼の「カブト」に対して、
青いマスクに左右2本のツノを持ち赤い複眼を持つ「ガタック」。

この配色はちょうど「カブト」の赤いマスクと青い複眼を反転させたもので、
互いの存在を引き立てあう色合いになっています。

また、造形面でもマスクの両側面から中央に向かうシルエットのガタックのツノと、
中央から伸び、外へ広がるカブトのツノはデザインにおける重心の取り方が対称的です。

さらに全体的になめらかなカーブを描く造形で仕上げられたカブトのマスクに対して、
ガタックは主に直線的なラインで立体化されたことで、それぞれの個性が光ります。

こういったキャラクターのシルエットやラインに一定の特徴を与えることで、
各ライダーをより魅力的なものに仕立てていることがわかります。

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クワガタムシの大アゴを象徴するガタックのツノ。
劇中では変身直後に頬のヒンジを軸にマスクをはさみこむ形でツノをせり上げる操演が見られました。

このマスク造形の要となるツノですが、大きな特徴ゆえに特に目立ちます。
ある程度の鋭さを感じられる形状でなければ野暮ったく見えてしまい、
かといって鋭さを表現するため単純に細くしてしまえば、小道具としての強度が損なわれてしまいます。

こういった点を見事に解消しているのが、ツノの突起を縁取るように配色された黄色です。
トゲの輪郭を削るように配色されることで、青いトゲ部分の鋭さを強調しつつ、
メインカラーの青色との補色効果を生み出し、「挿し色」として実に良く機能しています。

ガタック後頭部2.0.jpg
ツノの迫力をより際立たせる工夫は頭部のカラーリングにも見られます。

ポイントは頭部中央の黒。これは特にマスクを正面から見たとき、
中央をあえて影のように黒くすることで、
より左右のツノが目立つように意図された色彩設計なのではないでしょうか。
普通の発想ではキーカラーである青を入れそうですが、そこはキャラクター造形において
何が1番の肝になるのかを明確に絞った結果、この配色に至ったと考えられます。

また、青いツノの根元のヘルメット部分は青いカラーリングが施されて色が統一されており、
迫力のあるツノの長さ・太さが損なわれず、後ろから見てもツノが貧弱に見えません。

ガタック複眼2.0.jpg
ツノが目立つガタックですが、マスクそのものも実に丁寧にデザインされており、
特に複眼とジャバラ状の口元との「境目」の処理が絶妙です。

説明のため仮に、複眼のカタチを正五角形として見たとき、
シルバーの口元にとなり合う複眼の一辺が青い「ヘの字」ラインと一直線になり、
また、口元を横に走るジャバラ状の線が同じく複眼の一辺と一直線にラインがつながり、
ちょうど複眼五角形の一番下のカドを中心に☓字を描くように線が交差しています。

ツノ以外のマスク自体はシンプルに見えながらも、線の多いデザインですが、
線の流れが丁寧に整えられており、不必要にゴチャゴチャした印象を与えないこの処理こそ、
ガタックの精悍な表情を成立させている大きな要素ではないでしょうか。

ガタックホーン2.0.jpg
ガタックの複眼の下からは通称「涙ライン」と呼ばれている、
石ノ森ヒーローに見られる涙の跡のような意匠が見られます。

「仮面ライダーカブト特写写真集 復刻版」の76Pにはガタックのデザイン完成までに、
石森プロの早瀬マサトさんの意見によって、
よりライダーらしさが強調されたという経緯を示す文章があります。

当初はツルッとシンプルだった口元も、
クラッシャーを思わせる段形状に仕上げられたことが紹介されており、
複眼の下も涙ラインをアレンジしたライダーらしさのアクセントだと考えられます。


カブトのライダーでは主に歴代の仮面ライダーに縁のある昆虫のイメージが取り入れられていますが、
過去にクウガのマスクデザインの方向性を決める上でキーとなったのが、
石森プロから提案された「クワガタ」をイメージしたデザイン群だったそうです。

平成ライダーの原点であるクウガ、
ひいてはクワガタのイメージを持つ平成ライダーはガタックの他にも複数登場してきました。
ブレイドのギャレン、オーズのガタキリバコンボもクワガタライダーとして知られています。

もともとクワガタムシの名前は鍬形という日本兜の装飾が由来になっていることから、
”カブト”と”クワガタ”はお互い切っても切れないものなのでしょう。

おめもじでした。


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マスク研究14 【仮面ライダーサガ】 [マスク研究レポート]

ライダーサガ3.0.jpg


仮面ライダーキバに登場した「サガ」。

キバに登場する怪人群のうち、チェスの駒になぞらえた4人の実力者たちの頂点、
「王」(キング)と称される人物が変身した姿で、
キバ怪人デザインの特徴であるステンドグラスのような色鮮やかな装飾を施したスーツが印象的でした。

テレビシリーズ中盤より活躍したサガは、キバのエンペラーフォームと対峙する場面が目立ちました。

エンペラーフォームのメインカラーであるに対して、
サガのモノトーンのスーツに映える鮮やかなや、
ピンポイントでカラフルな装飾を持つ独特なカラーリングが画面に映る両者を惹き立てあっていました。

サガ正面3.0.jpg
大きな青い複眼に覆われたサガのマスク。

設定上、「仮面ライダーキバ」と同じルーツを持つライダーということもあり、
複眼やアゴの形状・全体のシルエットなど、キバのマスクの特徴を残しつつアレンジされたデザインです。

キバとは異なる頭部の白い帯状の造形はまるで王冠をかぶっているかのようであり、
王を名乗る存在としての設定を踏まえた迫力を演出しています。

また、この王冠の形状は西洋のゴシック建築に見られる構造様式「尖頭アーチ」を模した山型に仕上げられており、
作品世界のイメージを反映したテイストで統一されています。

王冠の輪郭は黒いラインでなぞられていますが、
画面背景のハイライトによる白飛びを防ぎ、
マスクの輪郭をぼかさない視覚効果が得られていたのではないでしょうか。

サガスラント4.0.jpg
額を中心に独特のディテールが集中するサガのマスク。

まず中央の赤いOシグナルを円状に囲む装飾は、
「バラ窓」と呼ばれるゴシック建築の教会などに見られる放射状に広がる窓を模したものになっており、
サガの額は建築の様式美を取り入れた意匠でまとめられています。

バラ窓は外の光を透過して室内にステンドグラスを映すためのものであり、
ステンドグラスを模した色彩設計で統一されたキバの怪人イメージを共有する記号として、
サガの持つバックグラウンドを象徴するアイコンとして額を飾っています。

撮影用マスクのステンドグラスの最下段は黄色オレンジのグラデーションになっていますが、
キバ特写写真集などに掲載されたデザイン画では特定の色を配するというより、
ホログラム状に色が変わることを想定していたことを思わせる配色でした。

おそらく立体化の際、青い複眼の補色として機能させるために目の近くの部分は黄色系にされたのだと思います。

サガ側面2.0.jpg
サガはキバのイメージモチーフであるコウモリに対し、牙を持つ動物、
そして回転する変身ベルトから着想された「ヘビ」のデザインが取り入れられています。

眉間から複眼の輪郭をなぞるようにヘビの身体が伸びてゆき、
それが首元を周ってふたたび眉間で2匹のヘビが向かい合う構図を作ります。
このアングルから見るとヘビの身体のラインそのものがS字を描いており、
サガのイニシャルのS・あるいはSnake(ヘビの意)を表わしているように映ります。

サガアップ2.0.jpg
またこのヘビの顔は正面から見ると、2匹併せて1匹のヘビが口を開けているようにも見ます。

これは2匹のヘビを象った意匠として知られている「ヘルメスの杖」を想起させますが、
この図が「二元性の統合」を意味していることをふまえると、図らずも変身者である登 太牙が、
最終話で人間と怪人との共存への道を歩みだそうと決意したことの暗喩的な造形であるとも捉えられます。

サガ側面Sサイン1.1.jpg
マスクの耳にあたる部分には前述の意味合いを持つであろうS字の彫刻があります。

これは1号などの耳部分にある矢尻状の彫刻のアレンジなのでしょう、
同様の造形がクウガやブレイドにも見られます。

ちょうどこのS字彫刻の傾きは、複眼の下部分の輪郭の延長線上につながる位置にあり、
ディテールの多いデザインを煩雑な印象にせずにラインが整えられています。

サガ&サソード1.1.jpg
サガのマスクの造形バランスは仮面ライダーカブトに登場したサソードとよく似ており、
Oシグナル周辺がダイヤ型である・下に尖った複眼・複眼の左右にとがった造形があるなど、
かなり近いバランスを元に仕上げられています。

同じデザインラインをなぞりながらも異なる印象のヒーローを生み出していくのは仮面ライダーのお家芸、
初代から続く手法でもあります。

また、どちらも怪人の力の資質によって変身したライダーであり、
ある種、伝統的な仮面ライダーの変身ルーツを踏襲した王道を行く仮面ライダーなのかも知れません。

おめもじでした。


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