マスク研究11 「仮面ライダー電王 ガンフォーム」 [マスク研究レポート]
仮面ライダー電王の主役、「電王」のフォームバリエーションのひとつである「ガンフォーム」。
拳銃の扱いに長けた怪人リュウタロスが電王に憑依することで変身し、
ダンスステップさながらの軽いフットワークでガン・アクションを披露しました。
電王は変身の際、主人公「野上良太郎」の身体に怪人が取り憑くことで、姿形のみならず
その怪人の人格を持ったキャラクターに変わり、別人のように振舞うようになります。
電王ベルトからガンフォームの力を引き出すリュウタロスは、子供っぽい性格ゆえか、
当初、野上良太郎のコントロールがまったく効かない状態のまま戦闘し、
銃を持ちながらも無鉄砲な危うい存在だったことが印象的でした。
突起の多い大きなY字のシルエットが特徴のガンフォームマスク。
桃太郎など日本童話の主人公になぞらえた怪人のイメージが反映される電王マスクですが、
リュウタロス・ガンフォームは児童文学「龍の子太郎」からそのイメージを取り入れたであろう、
東洋の「龍」の頭をイメージした独自のシルエットで構成されています。
龍の持つワニのような面長の顔、2本のツノ、鼻先から伸びる長いヒゲ。
これらの特徴はそのままガンフォームマスクのデザインを象徴するものです。
中央の2本のツノと、長くとがった複眼の先端と傾斜の角度が平行していることで、
見かけ以上に大ぶりに感じさせる仕掛けがあり、マスクの迫力が強調されています。
ガンフォームの複眼は龍の顔のシルエットそのもので構成され、その輪郭は上下に延長された形となり、
単純に目と呼ぶには似つかわしくない独特のスタイリングです。
目に相当する位置から上へ長く伸びることで、龍のツノや鬣(たてがみ)といったイメージを表現しつつ、
頭部に鋭利な形状を持たせることで、ヒーローらしい顔つきを成立させています。
次に目元から口元へ延長される複眼の造形は、ベースマスクの口元を覆い隠すことで、
ガンフォームよりも先行して登場していた他の電王マスクとは異なる印象を生み出しています。
ソード・ロッド・アックス・ウィングなどの電仮面はベースマスクの口元を隠さずに仕上げられており、
同じライダーとは思えないバラエティー豊かなキャラクター性が強調されています。
その口先にあたる部分からは龍の”ヒゲ”が伸びていますが、
急角度で上に立ち上がる形状をしているのは生え際から横にワイドに伸びることで、
口元で曲線的にすぼまり下へ向かう流れを受け止めるカウンターとして効く造形になっています。
さらにヒゲを含め複数の突起が縦に伸びる形状が多用されるこのマスクにおいて、
バランスを持たせるために【水平方向のライン】が重要になります。
それがヒゲの生やし方、複眼の彫刻パターンに表れている絶妙な造形のマスクです。
電王マスクは各フォーム共通のマスクの上に、
キャラクターシンボルである「電仮面」が覆う二重の構造をとっています。
これは主人公の変身に加えて、怪人の力による変身が重なることを象徴したデザインだと考えられます。
複眼の色も変身のキーとなる怪人リュウタロスのイメージカラー紫色が取り入れられています。
ガンフォームの仮面はベースマスクの造形ラインとの調和が意識された造形であり、
頬にかけてすぼまっていく複眼の輪郭はベースマスクの頬のラインと重なるように整えられていたり、
「ヒゲ」もアゴのラインをなぞるような角度で伸びていて、
ベースマスクと電仮面を含めたマスク全体のバランスが違和感なく保たれています。
ガンフォームの頭部には「線路」を覆う白いカバーがあります。
顔を横断する線路は電王マスクにとっては大きな特徴となるディテールでありながら、
なぜカバーを設けて覆い隠すデザインになっているのか。
これはマスクが比較的やや下よりに細かなディテールが集中しているため、
(ガンフォームは電王基本4フォームのうちOシグナルの位置も一番低い)
対比的に線路のディテールを排してシンプルにすることで、視覚的な”抜け”が生まれ、
ツノを目立たせるとともに、結果的にマスク全体の見栄えをすっきりさせる効果があります。
マスクを彩る紫色と金色の配色は、それぞれの色を引き立てあう補色関係にあり、
ベースマスクの横から後頭部へ走る金色のラインともほぼ同じ配色であり、色彩上の統一感あります。
クウガで生み出された紫色の目をした仮面ライダーは、
ファイズの仮面ライダーカイザなどを経てヒーローカラーとしてすっかり定着した印象があります。
しかし紫といういわば毒々しくも見えてしまう
ヒーローには不向きな暗さを持ち合わせる色をキーカラーとしたガンフォームですが、
比較的スーツ・マスクに白など明るい色の面積も確保され、また子供っぽい性格設定も、
むやみに暗い雰囲気を感じさせない一面があったのだと思います。
同じ龍をモチーフにした「龍騎」とはまったく異なる造形で完成されたガンフォーム。
これからも新しい仮面ライダーが生み出されていくでしょう。
人気を集める仮面ライダーのデザインに一定の「正解」はありません。
答えなき答えを追求し続ける姿勢が失われない限り仮面ライダーは新しい線路を進み続けるはずです。
だからこそ、答えなんて聞く必要はないのでしょう。
おめもじでした。
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>マスク研究17 「仮面ライダー幽汽 ハイジャックフォーム」
電王シリーズのライダーのマスクは電仮面のデザインにより今までのヘルメット=仮面という若干腑に落ちない所をスッキリさせてくれた気がします。今までのライダーたちもマスク前方にデザインが集中していましたが、マスク後方から線路を伝い『仮面』が装着されるの見て、これこそ仮面だと感心しました。
長く、しかも一人語りになりましたが次のデザイン研究楽しみにしてます!
by 仮面兄さん (2011-10-31 22:13)
私が思うに、おそらく”お面”だと道交法に違反してしまうのです。
しっかり頭を守るヘルメットをかぶらねばヒーローはオートバイに乗れません。
子供たちのお手本として平和を守る前にルールを守る必要があるのでしょう。
でも実際に仮面ライダーのマスクをかぶって走ったら捕まりそうですね。
あと、ほとんど前見えないですし。
by おめもじ (2011-11-01 01:09)
そういえば仮面ノリダーも顔は出てるもののよく見るとハーフヘルメット風でちゃんと法律まもってますねw
コスプレ会場の近くでは結構捕まってますねぇ
ライダー必殺ダイナミック交通事故は規制されないといいですw
by 仮面兄さん (2011-11-02 09:00)